世にも恐ろしい痛みとは

留学時代のこぼれ話、4弾。
 
寮生活を卒業しキャンパスの外で
一人でアパートを借りて
悠々自適に暮らしていた頃のこと。
 
たっぷり太っていたのが悪かったのか?
体質だから仕方ないのか?
前日、友人とバドワイザーを12本ならべて、
端から飲み干していくという
アホウなゲームをしたバチがあたったのか?
 
それは日曜日の早朝の出来事。

原因不明の腹痛に襲われました。

 

それは、寝起きに一発、
マイクタイソンに脇腹にパンチを食らったような
衝撃で、声を発することもできなければ、
ベッドから這い出ることもできない。
 
出るのは、じっとりとした脂汗のみ。
 
はて、何を食ったのか?
 
ベッドから這い出て、2、3歩で
力尽き、そのまま床にうずくまりました。
 
まさにスリーカウントで試合終了して
欲しいほどの気分。
 
うんうん、うなっても解決しないどころか
脈拍とともにドクン、ドクンと鈍痛・・・
いや、激痛が身体を駆け巡る。
 
そんな痛みでした。
 
 
世の中には、男性が耐えられないであろう
痛みが2つ存在するというのを聞いたことがある。
 
一つが分娩で。
もう一つが尿管結石だ。
 
もうろうとする頭で考えた結果だが、
誰かに隣町の救急センターまで連れてって
もらわねばならない。30分はゆうにかかるが、
そんなに体がもつだろうか?
 
その日、
2階に住む親しい友人は
彼女に会うために里帰り中だった。
 
ふと外をみると、
もう一人の2階の住民のピックアップが
目に入った。悪い奴じゃないんだが、
言葉を発するたびにどこか揚げ足をとるやつで、
いまいち打ち解けてはいなかった。
 
いや、考える前に行動だ。
 
 
呼び鈴を鳴らすと
 
「おい、どうしたってんだ?
 そんな顔して、おまえいつも以上に
 死にそうな顔をしているぞ?」
 
この冗談の通じない状況で、
やっぱり、余計な一言が返ってきた。
 
ここはスルーして、痛い腹を抱えながら丁重に
お願いすることにした。
 
「すまんが、医者に連れてってくれ。
 冗談なんかじゃなくって、マジで腹がいたくて
 死にそうなんだ。多分、結石だ!」
 
「なんでわかるんだ?
 おまえ冷や汗ビッチョリだせ。
 気色悪っ」
 
「男が我慢できない痛みっていったら
 一つしかないだろがっ!頼むから
 医者に連れてってくれ」
 
 
そして、この嫌味な会話は救急に着くまでずっと続いた。
 
なんど、もういい!とキレそうになったことか。
 
 
救急についても、
保険会社と支払いの確認が取れるまで
診察はしてくれない無情なアメリカの
医療システムを本気で呪ってやろうかと
思った。
 
ごった返した待合室のテレビでは、
ダイアナ妃の葬儀が厳かに執り行われていた。
 
思いをイギリスに飛ばしていると、
エルトン・ジョンの弾き語りが始まった。
 
魂に触れる歌声だと思った。
 
そうこうしているうちに、
不思議と痛みが突然消えた。
 
石が膀胱へと落ちたようだった。
 
「ああ、助かった」と思わず言葉が漏れた。
 
 
その後、医師の診察を終えるとやはり
結石だった。念のためといいつつも
点滴と痛み止めを処方された。
 
 
帰りの迎えを頼もうと嫌味なピックアップ隣人に
電話すると、意外にも2つ返事できてくれた。
 
尿路結石であったこと、おそらく膀胱に落ちている。
これから石が尿道を引っかきながら通ってくるから
出血を伴う可能性があること、石がでるまで
おしっことのときはフィルターで濾して確認する
必要があると手短に伝えた。
 
「そっか
 実は俺もやったことがあるからな。
 心配いらねえぜ。そのうち落っこちまうからな」
 
おい、
それは俺が医者に行く前に言ってくれ・・・と
思ったが、もうどうでもよくなってしまった。
 
朝からの痛みに疲れ、アパートに戻って
ただただ休みたいと思った。
 
 
それにしても、遠くの家族や友人、そして同じ大学の
日本留学生よりも、近くに住む隣人がこんなにも
ありがたいと感じたのははじめてだった。
 
 
そして、
世にも恐ろしい痛みをを経験し、
隣人のありがたみもわかったが、
一つだけ経験したくないことがまだある。
 
それは、男性でよかったということ。
つまり、分娩。
 
これ以上の痛みを経験するのであれば、
きっと死ぬわな・・・。
 
男は弱っちい生き物でもあるのです。
 
 
私が、その後
世の女性に最大限のリスペクトを
払うようになったのは
他でもありません。
 
 

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